2009/6/16 火曜日

『最近の移動事情』

小森陽一日記 16:40:06

仕事がら東京と自宅のある福岡を行き来している。今月もすでに二度目だ。この10年、そんな生活をしているので随分と旅慣れて来た感じもする。持って行く荷物の選択もお手の物だ。
  
以前は新幹線を利用していたから時間たっぷりあった。DVDにゲーム機に本と、どっさりバッグに詰め込んでいた。バックが三つ、四つになる事もあった。あまりの重さに根を上げ、ホテルから自宅に郵送した事も度々だった。だが最近の移動はもっぱら飛行機、今年に入ってからはすべてそうだ。あんなに飛行機を嫌がっていたのに………、以前のブログを読んだ事のある方はそう思われるかもしれない。そう………、確かに飛行機は苦手だったのだが、どういう訳だかそれほど嫌じゃなくなった。確たる理由があればいいのだが、それもない。ただなんとなくそう思えた。雨降って地固まる、例えは少々おかしいが、怖い怖いという思いがピークに達し、いつのまにかそれがトーンダウンした、そんな感じだ。

羽田~福岡間、乗ってしまえば1時間とちょっとで行く事も戻る事も出来る。1時間ちょっと………、新幹線の5時間を考えればあっという間である。この間何をしているかというと、ゲームだ。『モンスターハンターポータブル2ndG』、自分がハンターとなって未知の生物と対峙し、生死を賭けた狩りをする。最初は基本操作や用語を覚えるのに苦労した。馴染みのない言葉が次から次に出て来て、それをマスターする間もなく狩りに出で、あっけなく憤死………。その繰り返しだった。だから訓練所に赴いた。ゲーム中には初心者向きに物事を教えてくれる教官がいる。動き方、必要なものの集め方、様々な武器の扱い方、そのすべてをこなした。解説書を読むのが大嫌いな自分にとって、これは本当に快挙だった。ちょっとアホだけど、教官の熱心な指導のもとに、ようやく一人のハンターとしてこの世界に踏み出す事が出来た。

「この先、電波を発していない電子機器類はご使用になれます」
アナウンスが掛かるや否や、待ってましたとばかりにスイッチを入れる。夢中になって狩りをしていると喉が渇く。すると絶妙のタイミングで客室乗務員さんが飲み物を持って来てくれる。お願いするのはいつもアップルジュース、ほどよい冷たさと爽やかな酸味が口中に広がり、甦ったように再びゲームに没頭する。するとあっという間に到着だ。

なんだ、飛行機嫌いが直ったのはゲームのおかけじゃないか!
いや、断じてそうではない。前記した通り、なぜだか飛行機が怖くなくなった。だからゲームをするようになったのだ。以前は例えゲームをしていても上の空、少し揺れ出すともう操作が手に付かなくなっていたのだから。

移動の時間も短くて済み、その間は熱中して遊べ、ほどよい興奮状態で仕事に向う。一石二鳥どころか三鳥である。だが、そんな中にも一つだけ悩みがある。このゲームの攻略本が辞書並みに分厚く重い事………。幾ら旅慣れて荷物を削る事が上手くなっても、この本一冊で有に取り戻してしまう。メーカーさん、お願いです。攻略本もディスク化して下さい!

2009/6/9 火曜日

『旅立ちに乾杯』

小森陽一日記 16:47:45

6月はジューンブライドの月、だが、今年の6月は別れの月だ………。

その人は山男だった。親父の部下で度々家にも遊びに来ていた。奥さんと一緒だった事もある。身長はお世辞にも高くはなかった。しかし、全身から気が漲り、子供心に「元気なあんちゃん」という印象だった。中学生の頃、ビデオカメラをその人から借り受け、映画を撮った。カメラとデッキがセパレートの時代、今思えば随分高いものだったと思う。だがその人は快く貸してくれた。そうして出来上がった作品は、僕の映画第1号となった。
………その人が先日亡くなった。心筋梗塞を起こしたという。まだ50代、エベレストまで登った山男が………、しばし絶句した。だが、亡くなった場所を聞いて「そうか」と思った。山だった。しかも人助けをしての末だったそうだ。あの人らしいな、そう思った。

彼女は頑張り屋さんだ。知り合って5年になるのか、驚くほど歳を取らない。いつまでも華やいで綺麗だ。そんな彼女が来月、福岡を離れる。寂しくないと言えば嘘になる。ピョンピョンと跳ねるように歩く独特の歩き方が見れなくなるのも残念だ。お世辞にも広いとは言えない事務所で、お茶を飲みながら世間話が出来なくなるのも………。でも、彼女ならやっていける、そんな確信がある。先日の送別会、ブルーに揃えた服、とても似合っていた。大丈夫、彼女なら立派にやっていける。

最初に会ったのは打ち合わせの席、友人の能楽師さんの講演会、僕がゲストで呼ばれ、彼女が司会だった。凛とした雰囲気、真っ直ぐな瞳、話をする時も笑う時も独特の間がある。いつも呼吸を入れて考える。「それってどういう事ですか?」何度彼女から質問を受けただろう。でもそれが決して嫌味にならない。素直さが溢れているから。そんな彼女からメールが来た。「このあたりで環境を変えてみようかな」、この感じ、彼女らしいと思った。きっと沢山考えての末だと思う。次は一体何をやるんだろう、何かを決めたらまた真っ直ぐに向って行くに違いない。きっとそうだ。

旅立ちに乾杯!俺はいつまでも、どこにいても、応援してるから。

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2009/6/2 火曜日

『サーガは永久に………』

小森陽一日記 17:38:53

栗本薫先生が亡くなられた。すい臓癌だった。まだ56歳………、逝くにはあまりにも早過ぎる………。

僕にとって栗本先生と言えばやはり「グイン・サーガ」である。大学生の頃にグインを知り、そこから延々と読み続けた。ハンドブックやイメージアルバム、画集と揃え、いつも本棚の一番目立つ所にグインは並んでいた。自由に闊達に、己の想像力を広げて創作するという事、誰にも遠慮はいらないんだという事、それを教えてくれたのがグインであり栗本先生だった。

残念ながら小説は100巻を読み終えたところで止まってしまっている。理由は色々だ。自分自身の環境が忙しくなったというのもあるが、展開がスローダウンしてしまった事が一番大きい。物語はやはり旬というものがあるようにも思う。永遠にその世界の住人と付き合っていきたいが、やはり何事にも区切りはある。とは言えこんな事は釈迦に説法、栗本先生は非凡な人だから、そんな事は当然分かっていらっしゃった筈だ。ご自身の区切りも当然見えていらしたと思う。だが、今となってはそれも永遠の謎となってしまった。グイン世界の数々の謎と共に………。

多大な感謝とご冥福を祈りつつ、101巻からの物語を読んでいくつもりである。

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2009/5/26 火曜日

『流れには逆らえない』

小森陽一日記 17:16:55

娘の家庭訪問で担任の先生が我が家に訪ねて来られた時の事だ。一通りの話しを終えてさあ帰ろうかとされている時、
「先生はプラモがお好きなんですか?」
と切り出してみた。子供の頃、ラジコン屋になるのが夢だったと、授業参観後の懇親会で語っておられたと妻から聞かされていたからだ。
「えぇ………まぁ………」
50代半ば、白髪でベテランの風貌を醸し出している先生が、一瞬照れたように笑われた。その笑顔を見て、
「実は僕もキット作りが趣味で………、宜しければ見ていかれますか?」
と声を掛けた。我が家は自宅と仕事場が廊下で一続きになっている。
「それじゃちょっとだけ………」
先生は申し訳なさそうに、仕事場へと続く廊下を歩き出した。そして一歩足を踏み入れた瞬間、
「――――わ!?」
ズラリと並んだ怪獣キットを夢中で眺める先生、その口からはプラモへの熱い思いが次から次に溢れ出た。その顔は本当に少年のようだった………。

義理母が時々人を連れて来る。
「友達の息子さんがね、あんたのコレクションがどうしても見たいって」
時にはこんな事も言われる。
「あんた一人で楽しむなんて贅沢!他の人も自由に見れるように開放しなさい!」
娘の友達も見にやって来る。
「ねぇ、これどこで買ったと?」
「違う違う、おじさんが組み立てて色ば塗ったと」
「えー!!」
元円谷プロのM社長や桜井浩子さん、円谷プロのKさんからは、
「東京で展覧会やらない?」
そんな事を言われたったけ。

趣味が嵩じて怪獣の原型師さんやそのファンの方とも親しく付き合わせて頂いている。
多くの方が僕の書いたキット本を購入し、好意的に受け止めてくれている。先日もある原型師さんからこんなメールを頂いた。
『小森さんのあのような活躍が、衰退しそうな怪獣ガレージの世界を救っているのは間違いないです!』

福岡で開いた個展から今年で5年、そろそろ次のタイミングが来ているのかもしれない。もちろん忙しい。夏には新作がスタートするし、小説や映画もやらなければいけない。でもね、流れには逆らえないから………。もちろん僕が勝手にそう思っているだけで、具体的な事は何一つ決まってはいない。でも、やってみようかな、そう思う事から全てはスタートする。そして今、やってみようかな、そんな風に思っている。

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2009/5/19 火曜日

『252 ピリオドなし』

小森陽一日記 10:22:01

いよいよ今週、『252生存者あり』のDVD&BDが発売される。なんだかあっという間の出来事だったような気がする。映画とドラマはこれで一応のピリオドなのだが、どっこい作品の方はピリオドなし。年末の発売に向けて、目下小説の準備中である。映画版のノベライズではなく、まったくの書き下ろし新作となる。

なぜ篠原祐司は消防を辞めたのか?

念願のハイパー入りを果たした早川勇作が、部隊長となった篠原静馬に尋ねる。そして少しずつ語られ始める兄弟の過去、想い、風野が殉職したあの火災現場の事………。
映画やドラマ、マンガの中で伝え切れなかった部分をすべて小説に注ぎ込みたいと思っている。
どうか楽しみに待っていて下さい!!

下記の写真はロケセットのスナップです。発売記念の蔵出しという事で。

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