2009/11/4 水曜日

『試写会の後で』

小森陽一日記 13:36:32

今週も色んな事があった。3D映画の撮影でレベル5の皆さんに会ったり、刑事さん達とお話したり、雨の中で芋掘りをしたり………、盛り沢山な週だった。
そんな中、「なくもんか」のキャンペーンで水田監督と阿部サダヲさんが来福。監督から家族共々招待を受けて作品を鑑賞した。その後僕は監督や阿部さんと合流、屋台でしこたま話しをした訳だが………、監督は僕が映画を見終わった直後の第一声が「面白かった!」じゃなかったと言ってむくれた。もちろん面白くない訳がない。監督と阿部さんと宮藤さんが組んでいるんだから。「面白かった!」と最初に言わなかったのには訳がある。以前、「人の作品を面白かったのたった一言で済ませるな!」と監督に言われた事があった。面白い――それが実に単純で簡単で物書きにあるまじき一言に思えたんだろう。だから今回は「面白かった!」という言葉を封印し、色んな言葉で「面白かった!」という事実を伝えようとした訳だが………、結果はこれだ。水田監督という人は、鋭さと真面目さと緩さといい加減さが実に不思議な具合にブレンドされている。へそ曲がりで偏屈だと思いきや、物凄い思いやりと気配りにこっちが恐縮してしまう事も度々だ。一言で言うと大変な存在、そして、これからも一緒に作品を作って行こうと思っているかけがえのない大切な存在なのである。

そしてもう一人、阿部サダヲさんだ。以前、一緒にご飯を食べて以来、僕は一発で阿部さんにやられた。一緒に仕事がしたくて仕方がない。阿部さんと会うと誰もがそういう気持ちになるんじゃないかな、ほんとに素敵なオーラを持っていて、妙に可愛らしくて、自然体でほのぼのしていて………。ここは水田監督と完全に一致する。今はもう休む間もないくらいの超売れっ子俳優な訳だが、それでも仕事を作り出して一緒に作品を作りたい。こんな想いの人が沢山いるからますます阿部さんの休みが減っていくんだろうけど………。

その昔、渥美清主演の連続ドラマ「泣いてたまるか」という作品があった。渥美さんが毎回違った役柄を演じ、監督、脚本も違う。ガードマンの話とかタクシーの運転手とかSFチックなシチュエーションもあって実にバラエティに富んでいた。今、「泣いてたまるか」をリメイクするなら主演は絶対阿部さんしかいない。阿部さんならどんな役柄でも歯を食い縛って頑張る男、泣いてたまるかと呟く強がりの男を見事に演じ切れるだろう。新作、「なくもんか」を観ながらそんな事を考えていた。ほんとに稀有な演者だと思う。阿部さん、近々に会ってご飯食べながら、面白い仕事の話、いっぱいしましょう!

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2009/10/27 火曜日

『一年振りのビッグサイト』

小森陽一日記 16:16:14

先週、東京ビッグサイトで行なわれた危機管理産業展に足を運んだ。思えば去年はこの展覧会にて、海保のトッキューと東消のハイパーとにご一緒させて頂いた。あれからもう一年………、月日の経つのは早いものである。

今回は連載している「S」と、まだ詳しくは打ち明けられない映画の為、テロ対策特殊装備展と警視庁警備犬の展示訓練をどうしても見たかった。見たかったなどという言い方になるは理由がある。テロ対策特殊装備展は一般人がほいほいと気軽に入れる場所じゃないのだ。ブースも別の場所、入る時は身分証明書の提示と空港並みのセキュリティチェックがある。要するに一般人お断りの場所な訳である。そこで去年お世話になった展覧会のディレクターであるYさんにメールを送った。すると直ちに電話が掛かって来た。
「「S」、もちろん読んでますよ!」
そんな嬉しい言葉と同時に、特殊装備展に入れるようパスを出して貰える事になった。(なんと僕と担当Kくん、マンガ家の藤堂くんはVIPパスだった………!)ほんとに嬉しい限りである。Yさん、ありがとうございました!
―――残念ながら特殊装備展の事はここに詳しく書けない。ただ、世界の最前線は今やここまで来ているのかと愕然とする想いを持った事だけは付け加えておきたい。

もうひとつの目的である警視庁警備犬の展示訓練。先日、国際緊急援助隊としてスマトラから戻ったばかりの山川さんが率いている。服従訓練からスタートし、臭気選別や捜索救助訓練と難なくこなしていく警備犬。まさに日頃の訓練の賜物だ。まったく素晴らしい人と犬の調和だと思う。そんな犬がひとたび首輪を変えると、今度は犯人に猛然と吠え付き果敢に立ち向かっていく犬に変る。同じ犬が人を助けもすれば人を襲う犬にもなるのだ。警備犬の凄さはここにある。襲撃訓練はやはり見ていて迫力があった。ジャーマンシェパードにひきずられる犯人役のハンドラーさん、噛まれる場所を間違えると何十針も縫う事になる。実際凄まじい縫い後を持つハンドラーさんを数人見た。物凄い………。ほんとにご苦労様です………。

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警視庁広報課にてしばし談笑した後、新宿で山川さんと合流。スマトラはもちろんまたまた色んな話を聞かせて頂いた。これが血肉となって物語に現れて行く事になる。マッシュは残念な結果になりましたが、またいつか必ずご一緒致しましょう!

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そうそう、訓練繋がりでもうひとつ話題を。我が家の愛犬マイも日曜日にJKCの家庭犬競技会に出場した。今回は惜しくも3席までには入らなかったが、訓練士さんと一緒に懸命に動いて頑張っていた。そんなマイを見ていると、なんとも言えない温かい気持ちになって来る………。人と犬って理屈抜きにいいもんだなぁと思えた、そんな1週間だった。

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2009/10/20 火曜日

『秋の香りは』

小森陽一日記 10:52:09

10月の半ば、窓を開けると庭先から芳しい香りが流れ込んで来る。今年も橙色の花を沢山付けた金木犀が満開となった。

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金木犀(キンモクセイ)
モクセイ科モクセイ属の常緑小高木樹でギンモクセイの変種。中国南部が原産で江戸時代に渡来した。秋になると小さいオレンジ色の花を無数に咲かせ、芳香を放つ。
―――Wikipedia

金木犀はあっという間に咲いてあっという間に枯れる。その間、濃厚な香りを放って自己主張する。この匂いをキライだと言う人もいるが、僕は秋の匂いとして気に入っている。なんとも甘く芳しい匂い、これがまたいい感じでもうひとつの強烈な匂いを消してくれるのだ………。

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キット作りを趣味とする人が一番周りに気を使うのは、騒音でも埃でもなく匂い、シンナーだと思う。鼻と目を付く過激な刺激臭、マジで危険な香り、脳みそや歯を溶かすというウワサもある………。だが完成させる為にシンナーは避けて通れない。窓を閉め切るとこっちが危ない、かといって開けっ放すと家族からブーブー文句が出る。しかし金木犀が満開となるこの僅かな期間だけは、その苦情がピタリと止む。シンナーの匂いを金木犀の芳香が包み隠してくれるのだ。
「あぁありがたや、金木犀………」
そう庭に向かって感謝しながら、秋の夜長、限られた時間を惜しみつつせっせとキット作りに励むのだった――。

2009/10/13 火曜日

『今週の秋』

小森陽一日記 15:53:41

まずは旅の秋。月曜日から3泊4日の予定で上京した。新作の打ち合わせと「S」の新展開打ち合わせ、それからキャイ~ン天野くんとの対談などなど、そして先頃シナリオ集を出された上原さんとの会食も今回のお楽しみの一つだった。が………、台風18号が北上、8日には関東直撃との予報。8日の午後には福岡に戻っていなければならない用事があったので、泣く泣く上原さんとお会いするのをキャンセルして、7日中に戻る事に………。ああ、秋台風………、恨めしい………。

戻ってからは新作の原稿に力を注ぐ。主人公の性格付け、出来事によって主人公の心に起こるエモーション、周りの人々の反応、そして一大決心―――。(原作ってこんな感じで書いてますよ、天野くん!)………とまぁこれを芸術の秋としておきましょうか。
そんな中、空いた時間でキットを組み立て、そして一気に塗装まで。ウルトラマンタロウを完成させる。趣味に打ち込むのもまた乙なもの。秋はホビーにもいい季節なのだ。

日曜日は地域の運動会。奥さんが今年体育委員をしている為、問答無用での参加となった。早朝からお父さん方とテントを組み立て、むかで競争やらラブラブショー(男女ペアの障害物競走)やら綱引きやらに出場、もちろん頑張りました。爽やかな秋晴れの下で埃まみれに………。これぞスポーツの秋。

今週もいろんな秋をやった。そして次第に季節は深まり、冬へと入って行くのだった………(センチメンタルな秋)。

追記
コッキン隊、無事に帰国。警視庁のYさんから電話を頂いた。とても元気そうな声、安心しつつ労いの言葉を掛けた。またまた様々なネタ話があるようで………。近々ゆっくりと話を聞かせてもらおうと思う。何にしてもコッキン隊の皆さん、本当にご苦労様でした!!

2009/10/6 火曜日

『コッキン隊、スマトラへ』

小森陽一日記 10:46:31

そこでは滅多に経験しないような大地震が度々起こる………。

今回もそうだった。先月29日、サモア諸島付近で発生したM8.3の大地震、それから一日後、今度はインドネシア西部、スマトラ島沖でM7.6の大地震が起きた。スマトラと言えば2004年12月26日、M9.3が発生、大津波で20万人以上の人々が犠牲になった。2006年5月27日にはジャワ島中部でM6.3が発生、この時も数千とも数万とも言われる犠牲者が出た。

今回のニュースを見た時、予感はした。そして現実に一報が入り出す。
「国際緊急援助隊の一員として、今夜、チャーター機でスマトラに向かいます」
海保からも消防からも警察からも………、沢山の知り合いから電話やメールが続々と届いた。警視庁のY氏からは「警備犬も連れて行きます」との事、首輪を変える事によって、災害救助(レスキュー)と警備活動(テロ制圧)という相反する任務をこなす優れた犬達だ。以前、海保のトッキューで活躍していた友人がコッキン隊として派遣された時、この警備犬に随分癒されたと言っていた。

命のタイムリミットと言われる72時間、それを経過すると生存率は急激に落ちる。だからコッキン隊は、その間、文字通り不眠不休で捜索を続ける。疲れと空腹、埃と腐敗臭で食事も喉を通らず、幻覚を見る事だってあると言う………。そんな過酷な状況のもと、彼等と共に働き、時にはじゃれて頬を舐めてくる警備犬という存在、生存者を探すと同時にレスキューマンの疲れ切った心を癒す大切な存在であり、同志でもある、そんな風に例えていた―――。

連日、現地からコッキン隊が活動している様子がニュースで流れて来る。想像を絶する被害を目の当たりにしながら、この瞬間も懸命に救助活動を行なっているコッキン隊。そんなコッキン隊に僕は何も出来ない。出来ないが、せめて彼等の事を常に想い、彼等の無事な帰りを祈ろうと思う。

「助けを待っている人がいるなら、レスキューは国も言葉も関係ない。
 どんな時でもどんな人でも、すぐに助けてやれ」

                   ――――「トッキュー!!」20巻
この言葉通りの事を実行しているレスキューマン達、皆さんも心のどこかで彼等の事を想い、無事な帰りを祈ってあげて下さい。

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